2009.8.9 SIGMA-XQ f4/200mm Soft Focus Test
前玉繰り出し調査

Camera: EOS 5D
SIGMA-XQ MULTI-COATED 1:4 f=200mm Σ-701479 LENS MADE IN JAPAN

Hektor f1.9/73mmの前玉を緩めて偽タンバール遊びをしていたら、SIGMA-XQ f4/200mmというレンズを山形さんから頂戴しました。
このレンズは奇妙なピント合わせ機構を持っています。被写体までの距離が無限から3mまでは全群繰り出しで、3mから90cmまでは前玉繰り出しの補助フォーカスを使用します。一種の簡易マクロなのですが、簡易マクロ使用時には非常にソフトフォーカス的な描写になります。こんなにソフトじゃマクロにならないだろ、という疑問があったので、寫楽彩の画像掲示板で問い合わせたところ、「れんずまにあ」さんから完璧な回答を頂きました。引用させて頂きます。

シグマが白書に登場するのは71年からで,丁度シグマ研究所が「システムの設計意図」という項目に答えていますので引用します。
ー レンズの基本的目的は,物体側の情報およびエネルギーを像側に忠実に伝えることにあります。われわれのレンズ設計の基本方針の第一は,このレンズの基本的 目的の向上を追求することにあります。すなわちハイレスポンスのレンズつまり解像力およびコントラストの良いレンズが最上と考えます。ソフトフォーカスレ ンズ,特殊効果のレンズなどは二次的に考えております。第二には交換レンズ,特に望遠レンズにおいては,軽量小型のレンズの製作に,特に努力しておりま す。ー中略ー当社の望遠レンズはすべてシステムフォーカスを採用しております。これは当社が開発した方式で,望遠レンズ の最短撮影距離の短縮に成功しました.通常の撮影範囲ではフォーカスリングを,近接撮影の場合は,レンズ鏡筒全部の補助フォーカスリングを使用します。 135ミリの望遠レンズで70センチ,200mmの望遠レンズの場合で90センチまでの近接撮影が特別な付属品なしで撮影できます。また絞りの位 置がフィルム面に対して一定の位置にあるので,通常の接写の場合に必要な露光補正も必要ありません。もしふつうの135ミリ望遠および200ミリ望遠で同 程度の近接撮影を行なう場合,それぞれ40ミリ,70ミリの接写リングが必要なことを考えていただければ,このシステムフォーカスの便利さを容易にご理解 いただけると思います。

さて上記をよむかぎりにおいては,意図的にソフト接写を狙ったとは微塵も感じられません。結果的にそうなっただけで,便利さ差別化を追求したが,設計技術が及ばなかったと推察されます。この方式がどうなったかは,後に単焦点で追随するものがなかったことから自明ですが,ズームの焦点合わせで生き残っているともいえます。

では、実験してみましょう。
左の列はSigma-XQで前玉繰り出しの補助フォーカスを使用した場合。
中央の列はSigma-XQで前玉繰り出しを使用せずに、中間リングを使用した場合。
右の列は比較としてCanon EF 75-200 F4Lで中間リングを使用した場合。


Sigma-XQ soft -------------Sigma-XQ normal 1/350s----Canon EF 75-200 F4L 1/500s
全群繰り出しの最短距離3mで撮影しトリミングした画像。Canonとそんなに変わりません。しかし、最短3mはかなり厳しいです。


Sigma-XQ soft 1/250s-------Sigma-XQ normal 1/125s----Canon EF 75-200 F4L 1/125s
1/4倍くらいのマクロ撮影。前玉繰り出しだとひどくソフトフォーカスです。中間リングを使うと一絞り暗くなりますが、シャープです。この比較は撮影倍率を合わせているので、被写体との距離は少し違います。


Sigma-XQ soft 1/125s-------Sigma-XQ normal 1/45s-----Canon EF 75-200 F4L
倍率テスト。同じ距離で撮影すると、前玉繰り出しの場合より、中間リングを使った場合の方が、拡大倍率が大きくなり、暗くなり、そしてシャープになります。それにしても、ひどいソフトフォーカスで、これをマクロ機能と呼ぶにはかなり無理があります。でも、まあ、シャープなマクロが撮りたければ従来通り中間リングを入れればいいわけですから、ソフトなマクロはおまけと考えることもできます。がんばれば案外良い写真が撮れるかもしれません。いずれにしろ、かなりの変わったレンズであることは間違いありません。

2008.8.13追加
上のような報告をしたところ、”れんずまにあ”さんから、次のようなコメントを頂きました。

このシグマ、70年当時の写真雑誌コンテストなどの傾向からして、浅い被写界深度や収差を楽しむ雰囲気ではまるでなく、多分三脚固定で絞ってモノクロという前提だったのではないかなあと愚考する次第です。絞ったら改善、するんでしょう?


思い出しました。そうです。当時はマクロ撮影する時、思い切り絞って、ストロボ直射していました。当時はマクロ撮影はそういうもんだと思い込んでいました。そこで、このレンズの絞り指標を見ると、F16とF22が緑字になっています。これはすなわち、前玉を繰り出す時にはF16以上に絞るようにという指示だったようです。


良く見ると、前玉を繰り出した時に出現するマクロ倍率指標も緑の文字で書かれています。

でも、緑インクの色が明らかに違います。これでは気づきにくいですね。きっと同じ緑色の文字にする予定だったのでしょうが、何かの都合で色が変わってしまったのでしょう。あるいは、印刷時には同じ色だったが、常時露出している絞り指標だけ色あせてしまったのかもしれません。

それでは、絞りによる描写の変化をテストしてみましょう。ストロボ直射です。
f4.0
f5.6
f8.0
f11
f16
f22
絞ればOKですね。つまり前玉を繰り出しても、近軸の収差は悪くならない、というレンズの性質を応用したわけですね。
一歩進めて、前玉繰り出し時には、自動的にF16まで絞られる、という機能が欲しくなるのですが、そうは問屋が卸しません。このレンズはTマウントで自動絞り機能を全く持たないため、F16だと暗くてピント合わせできません。ですから、F4でピント合わせしてから、f16に絞る必要があります。そういえば、昔はリングストロボとベローズとダブルレリーズを使って絞ってマクロ撮影していたのを思い出しました。

昔のことは思い出すのに時間がかかる、というのが結論かもしれません。